読書で寝落ち

日々の読書記録です。

怪奇小説から平成を振り返る①~平成怪奇小説傑作集〈1〉 東雅夫 編

怪奇小説で平成を振り返る短編集。全三冊のうちの1冊目。

読み終わった時点でこんな感じのツイートをした。
15作くらい収録されているが、どの掌編もそれぞれ違う印象を持って立ち上がってくる。
"ホラー"というよりはタイトル通り"怪奇"といった趣の小説が並ぶ。

怪しくて奇妙
 
まさにこれ。
 
「平成」という縦軸を視点として読むのでそれぞれがより心に残りやすい気がする。
こういうアンソロジーはすごく好きです。
どの小説がどういう視点で選ばれて、どういう構成で一冊になるか考えながら読む楽しみがある。
 
1巻目、それぞれの感想を以下に。長いよ。

『ヤマケイ文庫 山怪 山人が語る不思議な話』田中 康弘

実際に山に暮らしている人々から著者が話を聞いて書かれている。人が亡くなったりした事件以外は話者は基本的に実名である。
 

いわゆる「怪談」ではないので明確な因果やオチ、輪郭のはっきりとした恐怖があるわけではない。
 
こういうことがあった。
 
基本はそれだけなのにページを捲る手が止まらない。実生活に根ざした語りのリアリティのおかげでどんどん怪異を追体験しているようだ。
生活の中のふとしたあわいにふと入り込む何者かの気配が人々の口から次々に語られていく。
 
遠くに光る狐火、山小屋の前で止まる足音、一度だけ辿り着いた幻の空間、山間に響き渡る絶叫、出られない山…
 
怪異には必ず科学的な理由があると考える語り手が多いのがわりと意外だった。
 
狐火はリンや鳥の羽根が原因だとか狐に化かされるときはたいてい酔っ払っているとか。確かにまあそうなんだろうと思う体験談も多い。
ただそれはそれとして、その推理が山での暮らしからの洞察力に基づいていて、生まれてずっと東京の私には新鮮で退屈することはなかった。
 
ツチノコは獲物を飲み込んでいる最中の蛇ではないか(蛇は獲物を丸呑みするのであの形になる)とかね。
自分からは絶対出てこない発想なのでおもしろい。
 
とはいえ怪異に懐疑的な語り手によくよく話を聞いてみると「……実は一つだけこんな話があったな」的パターンも結構あり、逆に不思議な出来事への信憑性が増してしまう何となく熱い展開だ。
 
心穏やかになったり笑いを誘う話から身体の芯から冷たくなるような冥い手触りの話まで、山には"何か"が確実に存在しているのではないかと思ってしまう。そんな雰囲気を漂わせる一冊。
 
以下好きな話。たくさんあったけど一部紹介。
 
「楽しい夜店」:山道に突然謎の屋台が現れる。
「僕はここにいる」:自分でもよくわからないナゾの直感で行方不明者を発見する。
「ナビの策略」:カーナビがどんどん目的地とは別のおかしな方向に進路を示す。
余談だがこれと同じ体験談は割とあり、単に目的地とは違うだけならまだしも導かれた場所が不気味な場所だったりする話をよく聞く。ex.墓場
あと子供を連れて思い出の場所に行くと、何故か視点が過去の自分を連れた父親に乗り移る話。風景も昔のものに蘇る。これは美しかった。
 
 
蛇足1:ヤマケイ文庫は電子書籍版をたまに結構な値引率でセールしていることがある気がする。
 
蛇足2:山怪シリーズ、表紙がルドンみたいでかっこいい。

セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹

今年一月に読んでその時つけたメモから。1/7読了。

 
togetterでこの作品が挙げられていたのでなんとなく再読した。
 
とはいえ別に怖くはない。