何を怖いと感じるか『事故物件7日間監視リポート』岩城 裕明
リサーチ業を営んでいる穂柄は不動産会社で勤務している古い友人の清水からとあるマンションの一室の調査を依頼される。そこは7年前に妊娠中の女性が割腹自殺を遂げた事故物件であった。穂柄はバイトで雇っている優馬に事件があった909号室で寝泊まりさせ、管理人室からモニタで監視することにした。モニターに映る謎の子供、次々に起こる異変。調査期間の1週間の後に穂柄が作成したリポートとは…。
青春は怪談とともに『文豪たちの怪談ライブ』東雅夫編著
よく一緒に遊んでいる子供たちの中の一人がふといなくなって『宮のない神様にもらった』って言ってそのへんには生えてないはずの南天をくれた。その子は何回かふといなくなりそのたびに南天を持ち帰ったという。鏑木清方の奥さんの体験談です。
センスオブワンダーと「宮のない神様」って言葉に潜む少しの不気味さがえも言われずお気に入り。
ジュニアでも大人でも読んで佳し「死 内田百閒・林芙美子ほか (文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 第二期) 」
文豪の怪談をジュニア向けに編纂したシリーズの一冊。編者は「平成怪奇小説傑作選」の東雅夫さんです。
これがシリーズ1冊目というわけではなくて気になった巻から読んでいます。
これは対象年齢どのくらいなんだろう?
10代前半には結構ハードなチョイスな気もするけど、こういう作品群を若いうちに読めるのはとても羨ましい。
ちなみにすべてルビが振ってあり、かなり細かく注釈がついている。
この注釈の一部にめっちゃマニアックな情報が載ってるのも妙に気になる。
まあそれはそれとして。
本書の構成は有名な「トミノの地獄」から始まって観音様が迎えに来る「二十六夜」で終わる。
これがバッチリはまって美しすぎる。これぞアンソロジーの醍醐味。
また玉川麻衣さんの表紙挿絵もとても素敵。
想像の余地を残しているメージが付きすぎない絵なのに各話の雰囲気に合っていてとてもいい。
しみじみした余韻に浸ったと思ったら「幻妖チャレンジ!」と称して古事記の「黄泉の国」の下りの原文・書き下し文・現代語訳が始まるというストロングスタイル。
わからないことがわかる!
書き下し文も話を知ってたからなんとか読めた感じ。
教養がほしい…
学校の古文でも万葉仮名では勉強しないから本当はこういうものだったんだって知るのは面白いよね。ジュニア向けの意義がある。
万葉仮名を解読した人すごいなー、それとも昔の人は普通に読めたのかな?とかいろいろ想像できると学校の知識が生きたものとして現れるのではないでしょうか。
収録作品はすべてキャラクターが立っているけれど、初めて読んだ作品の中では
原民喜「秋旻」、 日影丈吉「墓碣市民」、林芙美子「上田秋成」、宮沢賢治「二十六夜」が気に入った。
特に日影丈吉「墓碣市民」は平成怪奇小説傑作選1に収録されていた同作者の「角の家」にも通じる
飄々とした感じがあって楽しく読んだ。
存在とはなにかみたいな真面目なテーマ性がありつつおかしみのある読み口が重さを感じさせず好きです。
西條八十「トミノの地獄」と内田百閒「冥途」はもはや殿堂入りの貫禄。
それにしても「トミノの地獄」はどうしてあんなに音読したくなるのかな。かっこいいからかな。
「地獄くらやみ花も無き」ってフレーズめっちゃかっこいいよね。
ちなみに私はこの年になっても例の都市伝説にビビってるので一度も声に出して読んだことはないです。
『三つ編み』レティシア コロンバニ
スミタはインドのカースト制度の最下層であるダリット(不可触民)で他人の家の糞便を集めることで生計を立てている。
ジュリアは家父長制度が色濃く残るイタリアで伝統的な家族経営の毛髪加工会社を営んでいる。
カナダのサラは野心家のエリート弁護士でシングルマザーだ。
この作品の美しいところの一つは乗り越えるべき敵・社会的なハードルに性別を限定していないところにある。
怪奇小説から平成を振り返る③~平成怪奇小説傑作集〈3〉 東雅夫 編
平成怪奇小説傑作集3。コメダで読んでたんだけど木内昇さんの「蛼橋」でふいに泣いてしまった…
— MiG (@Mikoyan_G) 2019年11月30日
このアンソロは1冊ごとにカラーが結構違う。平成というのはかなりダイナミックな時代の動き方をしていたのかもしれない。 pic.twitter.com/xsGEWEoJUA
それぞれの感想を以下に。