読書で寝落ち

日々の読書記録です。

荒俣宏 編『アメリカ怪談集』

昨晩やっと読み終わった。

良かったのはビアスハルピンフレーザーの死』これは読み終わって何が起こったか理解できずに再読した。けどやっぱり出来事の全体が判然としなくて混乱した中に怪異の邪悪さだけ読後に際立って残る感じ。もしかしてわからないの私だけだったりするのかな…

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他にはM・E・カウンセルマン『木の妻』殺された恋人の死体を埋めた木を夫として暮らす少女を訪れる話。怖さの所在が揺らぐ感じが好み。

H・S・ホワイトヘッド黒い恐怖ヴードゥーの呪いvs神父。呪術の詳細が興味深い。
ちなみに呪う対象の人物所有の衣服を最近埋葬された人物に着せ、3日間置いたあと再び元の持ち主に身に付けさせるという方法で、呪いと言ってるけど感染症的にもヤバそうなので実際の効果も結構あると思う。

イーディス・ウォートン『邪眼スノッブで嫌ったらしい人物描写が秀逸で気分が悪くなるほど。邪眼の解釈は色々できそうだけど、私は本人だと思った。

ポオ『悪魔に首を賭けるな 教訓のある話
前述の『ハルピンフレーザーの死』にもかなり邪悪な存在が登場するが、こちらは作品自体が邪悪な顔をしている。ストーリーはシンプルながら露悪的な冗談を重ね続けて悪意を持って終わる雰囲気が不気味。

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この帯のコピーがとても好き。かっこいい

という感じだったけどこの本を読み終わるのに予想以上に時間がかかったのは、収録作A・H・ルイス『大鴉が死んだ日』に引っかかってなかなか読み進められなかったので。

この作品はアメリカの開拓時代の老人が語るホラ話として書かれている。
話があっちこっちの飛ぶのと登場人物の名前がなかなか頭に入ってこなくて寝落ちを繰り返しながらなんとか読み進めた。
方言とか癖のある話し方を翻訳で表現するのは本当に難しいんだろうなと思います。
内容は教訓のある民話のような雰囲気で、アメリカの怪物?妖怪?なのかなウェンディゴが登場して興味深かった。

通して読むと粒ぞろいだし各作品に際立った個性もあって印象に残る作品が多かった。
編者の荒俣宏氏の解説が良かった。

  1. まずアメリ東海岸の古都(ボストンやニューヨーク、セイラム)の物語。
  2. 次に白人文化を取り囲むインディアンや黒人たちの素朴だがパワフルな魔術伝承。
  3. 最後にアメリカを象徴する都市文明と、そこに住む人々の精神崩壊を表現した新たな小説群。

このように作品の選出基準をはっきり書いてくれているので理解が深まりやすいかもしれない。

他の地域とどう違うか考えるのは、そこまで数多く読んでいないのでこれからの楽しみにしておこうと思う。